
Guide 4: 日本で使われる編み図記号[増減目編]
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複数のステッチを表す編み図記号
Guide 3では、知っていると幅広い編み方に対応できる、やや応用的な日本の編み図記号をご紹介しました。
今回は、基礎的な編み方がもとになった、増目と減目を表す編み図記号を10個ピックアップします。どれも登場頻度が高く、様々な作品に使われる編み図記号です。
2目編み入れる、2目一度するなど、複数のステッチを連想させる複合的な編み図記号になっていますので、Guide 1に登場した基礎的な編み図記号を思い出しながらご覧ください。
増目・減目の編み図記号
ここでは、こま編み、中長編み、長編み、長々編み、の4種類の編み方を取り上げます。増目や減目の編み図記号は編むときの操作をイメージしやすく、法則性もあるため、直感的に理解しやすいのではないでしょうか。
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こま編み2目編み入れる |
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こま編み2目一度 |
Two Single Crochet in the Same Stitch | Single Crochet Two Together (sc2tog) | ||
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中長編み2目編み入れる |
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中長編み2目一度 |
Two Half Double Crochet in the Same Stitch | Half Double Crochet Two Together (hdc2tog) | ||
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長編み2目編み入れる |
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長編み2目一度 |
Two Double Crochet in the Same Stitch | Double Crochet Two Together (dc2tog) | ||
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長々編み2目編み入れる |
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長々編み2目一度 |
Two Treble Crochet in the Same Stitch | Treble Crochet Two Together (tr2tog) | ||
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長編み5目編み入れる | ![]() |
長編み5目一度 |
Five Double Crochet in the Same Stitch | Double Crochet Five Together (dc5tog) |
似たようなデザインの編み図記号が多いですよね。
増目の記号は2つの記号の根元がくっついたデザインで、減目の記号は2つの記号の頭がくっついたデザインになっています。
これが、組み合わされる記号の数が3つに変わると、3目編み入れる、3目一度する、というふうに応用的に解釈することができます。
増目の記号は2つの記号の根元がくっついたデザインで、減目の記号は2つの記号の頭がくっついたデザインになっています。
これが、組み合わされる記号の数が3つに変わると、3目編み入れる、3目一度する、というふうに応用的に解釈することができます。
・こま編み2目編み入れる
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「こま編み2目編み入れる」の編み図記号![]() |
こま編みを輪に編んでいくバッグやあみぐるみなどで、必ずと言っていいほど登場する「こま編み2目編み入れる」の記号。
V字の底の頂点が指している前段の1目に、こま編みを2目編み入れて増目することを意味しています。
こま編みの増目と減目は、書籍や作家によって記号が若干異なることがあるため、例として2種類の記号を掲載ました。たいていはこれに類する記号となっており、いずれも同じ意味で用いられます。
英文パターンでは「two single crochet in the same stitch」といった意味合いの表現が使われます。

ex.この編み図は、くさりの作り目で編みはじめ、それ以降の段も引きつづき輪に編んでいく例です。具体的な編み方は、次のようになります。
【作り目】
作り目のくさりを6目編む。
↓
【1段目】
立ち上がりのくさりを1目編み(1目とみなさない、以降同様)、作り目のくさりの6目めにこま編みを2目編み入れる。次のくさり4目にこま編みを1目ずつ編み、作り目のくさりの1目めにこま編みを3目編み入れる。Uターンするように次の5目にこま編みを1目ずつ編み入れたら、最初の目に針を入れて引き抜き編みをする。
↓
【2段目】
立ち上がりのくさりを1目編み、前段の最初の目にこま編みを2目編み入れる。次の目にもこま編みを2目編み入れ、次の4目にはこま編みを1目ずつ編む。次の3目にこま編みを2目ずつ編み入れてUターンしたら、次の4目にはこま編みを1目ずつ編む。前段の最後の目にこま編みを2目編み入れたら、引き抜き編みをする。
↓
【3段目】
立ち上がりのくさりを1目編み、次の4目に「こま編み1目、こま編み2目」を2回繰り返し、次の4目にはこま編みを1目ずつ編む。次の6目に「こま編み1目、こま編み2目」を3回繰り返し編む。次の4目にはこま編みを1目ずつ編み、最後の2目に「こま編み1目、こま編み2目」を編み入れたら、引き抜き編みをする。
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楕円が平たく広がっていく編み地の場合には、この編み図のように増目をしながら編んでいきます。
このような輪の編み図は、「こま編み2目編み入れる」の編み図記号が使われる代表的な例といえます。
こま編みの増目記号で類似するものとして、前段の同じ目に「こま編み3目編み入れる」があり、次のような編み図記号が使われます。

2目編み入れるときの記号と比較すると、真ん中に1本線が増えている、という違いがあるだけですね。
このように、増目の編み図記号は編み入れる目数を図的に表しています。
・こま編み2目一度
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「こま編み2目一度」の編み図記号![]() |
こま編みの増目「こま編み2目編み入れる」を逆にしたデザインの「こま編み2目一度」記号。
あみぐるみなどで、だんだん編み地を閉じていくときなどに用いられる減目の記号です。
記号の下2か所の頂点が指す前段の目に針を入れて未完成のこま編みを2目編み、一度に糸を引き抜いて完成させます。
こちらも、見た目が少し異なる編み図記号が同じ意味で使われることがあるので、例として2つ掲載しました。
英文パターンでは「single crochet two together (sc2tog)」のように表記されます。
これに類するものとして、前段の目に対し「こま編み3目一度」をするときは、次のような編み図記号が使われます。

先ほどの増目記号のときのように、2目一度の記号と比べると、真ん中に1本線が多いことが分かります。
減目の編み図記号も、このように前段の何目を一度に編むかを図的に表しています。
では、これらの記号が編み図の中でどのように使われるか見ていきましょう。

ex.この編み図は、作り目のくさりを輪にして編みはじめ、それ以降の段も引き続き輪に編んでいく例です。具体的な編み方は、次のようになります。
【作り目】
作り目のくさりを24目編み、最初の目に針を入れて引き抜き編みをする(作り目のくさりが輪になる)。
↓
【1段目】
立ち上がりのくさりを1目編み(1目とみなさない、以降同様)、つづけてこま編みを24目編んだら、最初の目に針を入れて引き抜き編みをする。
↓
【2段目】
立ち上がりのくさりを1目編み、こま編み2目、こま編み2目一度、を編む。つづけて「こま編み4目、こま編み2目一度」を3回繰り返し、こま編みを2目を編んだら、引き抜き編みをする。
↓
【3段目】
立ち上がりのくさりを1目編み、「こま編み3目、こま編み2目一度」を4回繰り返し編んだら、引き抜き編みをする。
↓
【4段目】
立ち上がりのくさりを1目編み、こま編み1目、こま編み2目一度、を編む。つづけて「こま編み2目、こま編み2目一度」を3回繰り返し、こま編みを1目を編んだら、引き抜き編みをする。
↓
【5段目】
立ち上がりのくさりを1目編み、「こま編み3目一度」を4回(前段の目をすべて3目一度)編んだら、引き抜き編みをする。
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この編み図は、編み進めるにつれて編み地が閉じていくデザインになります。
目数こそ作品によって異なりますが、このような段階的な減目は、こま編みだけでなく、長編みや中長編みなど他のステッチの減目にも見られます。
・中長編み2目編み入れる
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「中長編み2目編み入れる」の編み図記号![]() |
こちらはこま編みよりもパッと見で分かりやすい「中長編み2目編み入れる」記号。
前段の同じ目に中長編みを2目編み入れます。
英文パターンでは「two half double crochet in the same stitch」といった意味合いの表現が使われます。
どのような編み図の中でこの記号が使われるか、例を見てみましょう。
以下は、平らな円の編み地ができあがるパターンです。

ex. この編み図は次のような解釈になります。
【作り目】
わの作り目で編みはじめる。
↓
【1段目】
立ち上がりのくさりを2目編み(中長編み1目とみなす)、つづけて長編みを11目編んだら、立ち上がりのくさりの2目めに針を入れて引き抜き編みをする。
↓
【2段目】
立ち上がりのくさりを2目編み(中長編み1目とみなす)、前段の立ち上がりのくさりの2目めに中長編みを1目編む。つづけてすべての目に中長編みを2目ずつ編み入れたら、立ち上がりのくさりの2目めに針を入れて引き抜き編みをする。
↓
【3段目】
立ち上がりのくさりを2目編み(中長編み1目とみなす)、次の目に中長編みを2目編み入れる。つづけて「中長編み1目、中長編み2目編み入れる」を11回繰り返して1周したら、立ち上がりのくさりの2目めに針を入れて引き抜き編みをする。
・中長編み2目一度
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「中長編み2目一度」の編み図記号![]() |
こちらは、中長編みの減目「中長編み2目一度」の記号です。
未完成の中長編みの目を2目編み、それらを一度に完成させることで減目をします。
英文パターンでは「half double crochet two together (hdc2tog)」のように表記されます。
では、具体的な編み図での使用例を見ていきましょう。
減目をするにつれて編み地の幅が狭くなっていくパターンです。

ex. この編み図は次のような解釈になります。
【作り目】
作り目のくさりを6目編む。
↓
【1段目】
立ち上がりのくさりを2目編み(中長編み1目とみなす)、つづけて中長編みを5目編む。
↓
【2段目】
立ち上がりのくさりを2目編み(中長編み1目とみなす)、つづけて中長編みを5目編む。
↓
【3段目】
立ち上がりのくさりを1目編み(未完成の中長編み1目とみなす)、次の目に中長編み1目を編み入れる(ここまでで中長編み2目一度とみなす)、つづけて中長編み2目一度を2回繰り返す。
↓
【4段目】
立ち上がりのくさりを1目編み(未完成の中長編み1目とみなす)、次の2目に未完成の中長編みを1目ずつ編み入れ、一度に完成させる(ここまでで中長編み3目一度とみなす)。
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こちらは「中長編み2目一度」のほかに、立ち上がりのくさりを含めて中長編み2目一度や中長編み3目一度とみなす例でした。
今回は往復編みを取り上げましたが、輪編みの編み地を閉じていくときなどにも使われることがあります。
・長編み2目編み入れる
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「長編み2目編み入れる」の編み図記号![]() |
先ほどの中長編みに準じて考えることができる「長編み2目編み入れる」の記号。
前段の同じ目に長編みを2目編み入れます。
英文パターンでは「two double crochet in the same stitch」といった意味合いの表現が使われます。

ex. この編み図は次のような解釈になります。
【作り目】
作り目のくさりを7目編む。
↓
【1段目】
立ち上がりのくさりを3目編み(長編み1目とみなす)、つづけて長編みを6目編む。
↓
【2段目】
立ち上がりのくさりを3目編み(長編み1目とみなす)、つづけて長編みを6目編む。
↓
【3段目】
立ち上がりのくさりを3目編み(長編み1目とみなす)、根元の目に長編みを1目編み入れる。つづけて「前段の目を1目とばし、その次の目に長編み2目編み入れる」を3回繰り返す。
・長編み2目一度
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「長編み2目一度」の編み図記号![]() |
長編みの減目「長編み2目一度」の記号。
未完成の長編みを2目編み、それらを一度に完成させることで減目します。
英文パターンでは「double crochet two together (dc2tog)」のように表記されます。

ex. この編み図は次のような解釈になります。
【作り目】
作り目のくさりを6目編む。
↓
【1段目】
立ち上がりのくさりを3目編み(長編み1目とみなす)、つづけて長編みを5目編む。
↓
【2段目】
立ち上がりのくさりを3目編み(長編み1目とみなす)、つづけて長編みを5目編む。
↓
【3段目】
立ち上がりのくさりを2目編み(未完成の長編み1目とみなす)、次の目に長編みを1目編む(ここまでで長編み2目一度とみなす)。つづけて「くさり1目、長編み2目一度」を2回繰り返す。
・長々編み2目編み入れる
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「長々編み2目編み入れる」の編み図記号![]() |
長々編みの増目「長々編み2目編み入れる」の記号。
前段の同じ目に、長々編みを2目編み入れます。
英文パターンでは「two treble crochet in the same stitch」といった意味合いの表現が使われます。

ex. この編み図は次のような解釈になります。
【作り目】
作り目のくさりを3目編む。
↓
【1段目】
立ち上がりのくさりを4目編み(長々編み1目とみなす)、作り目のくさりの3目めに長々編みを1目編む。次の2目には、長々編みを2目ずつ編み入れる。
↓
【2段目】
立ち上がりのくさりを4目編み(長々編み1目とみなす)、根元の目にも長々編みを1目編んだら、次の目に長々編みを1目編む。つづけて「長々編み2目、長々編み1目」を2回繰り返す。
↓
【3段目】
立ち上がりのくさりを4目編み(長々編み1目とみなす)、次の目に長々編み1目、その次の目に長々編み2目を編み入れる。つづけて「長々編み1目、長々編み1目、長々編み2目」を2回繰り返す。
・長々編み2目一度
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「長々編み2目一度」の編み図記号![]() |
長々編みの減目「長々編み2目一度」の記号。
未完成の長々編みを2目編み、それらを一度に完成させることで減目します。
英文パターンでは「treble crochet two together (tr2tog)」のように表記されます。

ex. この編み図は次のような解釈になります。
【作り目】
作り目のくさりを8目編む。
↓
【1段目】
立ち上がりのくさりを4目編み(長々編み1目とみなす)、作り目のくさりの7目めに長々編みを1目編む。つづけて長々編み2目一度を2回繰り返し、残りの2目には長々編みを1目ずつ編み入れる。
↓
【2段目】
立ち上がりのくさりを4目編み(長々編み1目とみなす)、長々編み2目一度を2回繰り返し、残りの1目に長々編みを1目編む。
↓
【3段目】
立ち上がりのくさりを3目編み(未完成の長々編み1目とみなす)、次の目に長々編み1目を編む(ここまでで長々編み2目一度とみなす)。残りの2目を長々編み2目一度する。
↓
【4段目】
立ち上がりのくさりを3目編み(未完成の長々編み1目とみなす)、次の目に長々編み1目を編む(ここまでで長々編み2目一度とみなす)。
・長編み5目編み入れる
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「長編み5目編み入れる」の編み図記号![]() |
増目記号のバリエーションのひとつ「長編み5目編み入れる」の記号。
模様編みやふち編みなどによく登場する記号なので、ここでご紹介します。
これまで見てきた「2目編み入れる」と、前段の1目に編み入れる長編みの目数が異なるだけで、こちらの記号は「5目編み入れる」ことになります。
英文パターンでは「five double crochet in the same stitch」といった意味合いの表現が使われます。

ex. この編み図は次のような解釈になります。
【作り目】
作り目のくさりを13目編む。
↓
【1段目】
立ち上がりのくさりを1目編み(1目とみなさない)、こま編みを1目編む。つづけて「2目とばして長編み5目、2目とばしてこま編み1目」を2回繰り返す。
↓
【2段目】
立ち上がりのくさりを3目編み(長編み1目とみなす)、根元の目に長編みを2目編み入れる。2目とばしてこま編み1目、2目とばして長編み5目、2目とばしてこま編み1目、2目とばして最後の目に長編みを3目編み入れる。
↓
【3段目】
1段目と同様に編む。
↓
【4段目】
2段目と同様に編む。
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ここでは「長編み5目編み入れる」記号を取り上げましたが、組み合わせられている記号の数が、実際に編む目数と対応しているので、数が変わっても分かりやすいですね。
これは、次にご紹介する減目の場合も同様です。
・長編み5目一度
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「長編み5目一度」の編み図記号![]() |
たくさんの目を一度に減らす「長編み5目一度」の記号。
「2目一度」は未完成の長編み2つを一度に完成させますが、こちらは未完成の長編み5つを一度に完成させます。
ステッチに高さのある長編みなので、一気に4目減っても編み目が美しく、こちらも模様編みなどで目にすることがあります。
英文パターンでは「double crochet five together (dc5tog)」のように表記されます。

ex. この編み図は次のような解釈になります。
【作り目】
作り目のくさりを13目編む。
↓
【1段目】
立ち上がりのくさりを1目編み(1目とみなさない)、こま編みを1目編む。つづけて「2目とばして長編み5目、2目とばしてこま編み1目」を2回繰り返す。
↓
【2段目】
立ち上がりのくさりを2目編み(未完成の長編み1目とみなす)、次の2目を長編み2目一度する(ここまでで長編み3目一度とみなす)。くさり2目、次の目にこま編み1目、くさり2目を編んだら、次の5目に長編み5目一度する。つづけてくさり2目、次の目にこま編み1目、くさり2目を編み、残った3目を長編み3目一度する。
↓
【3段目】
1段目と同様に編む。
↓
【4段目】
2段目と同様に編む。
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ここでは「5目一度」を例に挙げましたが、これがもし「3目一度」の場合は、3つの記号が1つに束ねられた編み図記号になります。
減目記号も、先ほど見た増目記号と同じように、組み合わせられる記号の数が実際に編む目数と連動しています。
一度ルールが分かると、記号から編み方が想像しやすいですね。
まとめ
今回は、基本的な編み図記号を複数組み合わせたような、増目・減目を表す編み図記号を10種類取り上げました。
増目する目数、減目する目数を編み図記号が視覚的に表しており、応用的に理解することができる記号でした。
このような編み図記号を知っていると、あみぐるみのような変化のある形状や、模様編みの編み方を理解するうえでも役立ちます。
様々な作品に使われるので、ぜひ実践に活かしてみてください。
次回 Guide 5 では、複数の記号を組み合わせたデザインの編み図記号を、他にももう少し見ていきます。模様編みに用いられるようなバリエーションまで視野を広げて、日本の編み図記号を学んでいきましょう。お楽しみに!